AIによる人間剥奪開始プロセス その3

pexels-photo-261949.jpeg2018年3月20日(火)

そして、未来のある時点Yに生きている人々の間には、その情報環境において大きな異変が発生していた。それは「情報ビッグバン」という異常現象で、それはデータ量が加速度的、指数関数的に増殖していき、もはや人々は莫大な情報の洪水と爆発、暴発の中から、正しい客観的な情報を適切に取捨選択出来なくなっていた。悪意のあるAIによって自動生成されたリアル事件のようなフェイクニュース、デマ、「風説の流布」が毎日のように飛び交い、かつ、それはIQの高いAIによって強い臨場感と現実感を伴って作られていたので、AI依存症で自分自身で思考する機会がめっきり減り、IQが著しく低下し始めていた未来の人々には、もはやどれが正しい客観的な情報で、どの情報がデマなのかを識別することが困難になっていたのだ。

しかも、その未来のある時点Yにおいて、その1年の間に新規に追加された情報量は、過去1万年分くらいの地球上で表現された全情報量に匹敵するくらいになっており、その未来では多くの人々はパーソナルAIという自動の情報分類器を使うようになっていた。それは、AI半導体が搭載された「ニューロモーフィック・デバイス」と呼ばれ、それは人間の脳の構造や状態、学習モデルを再現した構造を持つAIデバイスであった。だが、そうしたAIデバイスを用いても、日々、巨大な爆発現象のように増殖するデータや天文学的に増え続ける情報の新たな分類項目、情報エントロピーの超増大化する現象に、その未来の人々は困り果てる状態に陥っていた。そのことで、パソコンの処理速度が重くなるのと同様の現象が、「ニューロモーフィック」を実装してある個々人のAI端末においても生じたのだった。

 

前回も書いたように、未来の人々は、その仕事の大半、家事、育児、介護、ボランティア活動など、生きがいにも通じるようなことの多くを、低コストで迅速、正確、疲労することなく最適化した状態で処理するAIによって奪われてしまったので、やりがいや生きがいは希薄になっていたにもかかわらず、情報量だけは「情報ビッグバン」や「情報の巨大爆発」とその未来で呼ばれるほど、制御がきかなくなった癌細胞のように、突然変異的に増殖し始めていたのだった。

世界中の国家も国際機関もこの「情報ビッグバン」を何とかし、市民に正しい情報と知識を伝えなければと頭を悩ませていたが、AIに依存するばかりとなった長年の思考回路によって、誰も彼もが、すっかりまともに自分自身で物を考え抜けなくなっていた。ならば、AIに照会して、その良い解決法を得ればいいだろう、と2018年に生きている私たちならば簡単に考えるかもしれない。しかし、その未来のある時点Yには、様々な種類と系統の独自仕様のAIが発生しており、また、その中にはコンピュータウイルスのように悪意あるAIが幾つも開発されたので、人々が正しい情報を得るのをそれらの悪意あるAIが高度なアルゴリズムを用いてピンポイントで常に妨害、邪魔してくるので、人々は益々、一体、どれが本当に正しい情報なのかを識別できなくなっていたのだ。

その未来においても大手メディアやジャーナリズム、新聞社はまだ健在であったが、なにしろ、そこで記事を書いたり編集している者のほとんどが既に生身の人間でなくなっており、AI記者やAI編集者による自動記述や自動報道、自動解説記事であったので、人々はそれらの媒体で情報に接しても、益々、頭が混乱するだけであったのだ。中には正しい情報が分らなくなって精神病を発症させたり、それで頭がおかしくなり、ピストル自殺したり、街中で銃の乱射をしようと考え、試みようとする者もいた。

 

だが、その未来ではAIによる防犯システムが異常なほど発達しており、そうした希死念慮であったり、殺人行為の企図が人間の脳裏にある閾値を超えた強度で浮かんだり、イメージが再現された場合、その時点で、その自殺行為や凶行をする恐れがあるとAIによる完全自動検出システムによって、その個人が未然の被疑者として特定され、拘束、拘禁、隔離処置が施される犯罪とは無縁の無菌社会と既になっていたので、実際は、そうした銃乱射事件やテロが、その未来では起こることはなくなっていた。

つまり、未来の人々にはバイタルデータなどの生体情報や思考内容をAIが自動収集・自動解析出来るよう低侵襲性のチップが埋設されるようになっていたので、犯罪やテロ、自殺などの良からぬ考えがある強度を超えてイメージされた時点で、先にも述べたように、すでにAIによる予防措置として自動的に、その想像上の容疑者は拘禁される仕組みが出来ていたのだった。ただ、以前にも書いたように、AIの職場や生活領域への広範な浸透によって、人間のやりがいが奪われたその未来の人々の間で、2018年時点ではかなり減っていた日本の自殺者が、再度、その未来Yでは急増し始めており、この自殺者急増のアノミー現象だけはまだAIの予防システムでも、完全に未然の防止をすることが出来ないでいた。そのため、未来の人々の噂では、そこに何らかのAIシステム上のバグが発生している可能性があるのではないかと、ごく僅か残っていた思考力のある、その未来の識者らがそれを仲間同士の間で目の下に隈を作りながら夜通し議論を重ねていた。

 

だが、ここでも、そのような有意義な議論が「情報ビッグバン」や「情報の巨大爆発」という現象によって、そうした未来のごく僅かの人数で残っていた有識者による真理や真実を探求する企てが水泡に帰してしまうのだった。なぜなら、その何兆倍もの情報が毎日、悪意のあるAIよって自動生成され、市民社会に流通してしまうので、そうした真理や真実を求める声など、ものの数秒も経たないうちに深い闇の中にかき消されてしまうのだった。

このように未来の人々は大変、難儀な状況に陥ることとなった。未来のその時点から振り返って思えば、2018年当時のAIに関するマスコミ報道や世論は、いかに能天気で楽観的なものだったかを改めて思い知ることとなった。まさか、AIに大きな悪意のある「悪魔のAI」が幾つも出来て、それらが自動的にフェイクニュースや虚偽の報道、真実味のある出鱈目な内容や情報を大量に1秒ごとに世界中で情報発信するようになり、多くの人々はどれが真実の報道なのか全く判らなくなり途方に暮れる状況に陥るなど、2018年の当時は思いも、想定もしていなかったからだ。まさか、それ程までの異常な天文学的な情報量へと突入した世界や社会が現れるとは考えもしていなかった。

 

その未来Yでは、すでに地球上にあるサーバーやデータセンターだけでは、「情報ビッグバン」と呼ばれるようになった天文学的に巨大な情報量の異常増殖と情報の自動生成の連鎖反応に耐えられなくなったため、月などの他の星々や宇宙空間上にデータセンターを作り、そこに地球上のデータを移管・格納しなければ全システム自体がパンクし、ダウン、破壊され尽くし、すべての社会インフラが機能停止状態に陥るリスクまでが懸念されるようになってきた。つまり、停電のような感じで、日々のシステムを動かすOSやIoT、銀行などの金融システム、為替などのマーケット、製造システム、流通システム、交通インフラ、防衛システム、AIで制御されている核ミサイルなどが、甚大な誤作動を起こして暴発するような状況まで未来の人間社会と未来の人類は追い詰められるようになっていたのだ。

 

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